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2009年12月22日 (火)

カールじいさんは『戦場でワルツを』踊らない

 先日、珍しく二日連続で映画を観た。しかもどちらもあまり好んでは観ないアニメ映画である。ただ、この2本は特別だった。

 年の瀬迫るこの時季にもなると、『おくりびと』がアカデミー賞外国語映画賞を受賞したのが今年のことだったとは思えない。すでに数年前のニュースであるかのように私の中では入力し直されている。ましてや、その対抗馬が『戦場でワルツを』だったことは覚えているはずもなく、パンフレットを見て、かろうじて頭の片隅にあった記憶を呼び起こすぐらいである。そんな映画があったよな、と。

 妻が「『戦場でワルツを』を観てみない?」と言わなかったら、おそらく観ないままだったかもしれないこの映画に触れられたことは幸運だった。そう思える作品だ。
 もちろんアカデミー賞作品賞はすばらしいのだろうが、世界各国を対象にしているという意味では外国語映画賞のほうがもっと価値があると私は思う。事実、『おくりびと』も『戦場でワルツを』もどちらもいい映画なのだ。前者は「死」に直接触れることが少なくなった現代において、きちんとまなざしを向けたことが、後者は実写以上にリアルに戦争を描ききったという意味で、である。

 映画はアリ・フォルマン監督自身の実体験に基づいている。しかし、その体験というのが記憶にない。失った戦場での記憶を呼び覚まそうと戦友たちを訪ね、聞き書きして映画は展開されていく。
 ほぼ全編がアニメで表現されているのだが、極端にデフォルメされているわけでなく、かといって写実的に描かれているわけでもないアニメーションが、なぜ実写以上のリアルさを伴ったのか? その妙な感覚がエンドロールをぼんやりと眺める自分には残った。戦争を経験したことのない自分が必死の想像で思い及ぶのは、戦争というものが「虚構」そのものだからではないだろうか、という推測である。

 『戦場でワルツを』でも醸し出されているが、誰も本気で戦争をやりたいなどとは思っていない。戦場にいる当事者たちも何が戦争であるか分からぬまま、現場の状況に反射的に、そして無意識的に反応しているだけである(弾が飛んでくれば、弾を撃ち返すというように)。兵士たちは、必死に戦争というものをイメージしようと頭の中で虚構をつくり、その虚構を必死に演じようとしていた。そう思うと戦争は “ファンタジー”なのである。それ故に、アリ・フォルマンはそれを記憶の彼方に留めてしまったのであり、その記憶が呼び起こされた時にアニメーションでしか表現しえないと思い至ったのではなかろうか。

 同じファンタジーでもカールじいさんは戦場でワルツを踊らない。

 沢木耕太郎が「この10分間は、最近のアメリカのCGアニメの中でも比類がないほど美しい。もしかしたら、その10分間によってこの作品のそれ以降の1時間余が支えられているのだ、と言ってもいいかもしれない。」(注1)と絶賛するように、冒頭の亡き妻と歩んだ人生の回想シーンは秀逸である。珍しく目頭が熱くなった。

 その後、独り残されたカールじいさんは、思い出がたっぷりと詰まった家もろとも飛び立つのだが、最後には(きっと少しの思い出だけを大切にとっておき)多くの記憶と決別する決心をする。

 記憶を辿らねばならなかったアリ・フォルマンと記憶と決別したカールじいさん。しかし、2つのファンタジーの行く末は、どちらも前向きであると感じている。
 二人はきっと新たな舞台でワルツを踊る!

P.S. このブログを読んで気になった方は、ぜひ劇場へ。心に残る映画になるはずです。私も時々、記憶をたぐり寄せることにします。そんな映画があったよな、と。

【参照】
◆『戦場でワルツを』
 http://www.waltz-wo.jp/

◆『カールじいさんと空飛ぶ家』
 http://www.disney.co.jp/movies/carl-gsan/

(注1) 沢木耕太郎「銀の街から」(朝日新聞朝刊2009年12月8日)
 カールじいさんと空飛ぶ家 〜亡妻との日々描いた10分
 http://doraku.asahi.com/entertainment/movie/review/091216_2.html

こころぐ

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コメント

ぽにょです。

一昨日、カールじいさんの空飛ぶ家観に行きました!!

最初の音の無いシーンから、嗚咽をこらえるぐらい泣いていました(ρ_;)
特に、カールじいさんが再び飛び立とうと、二人の椅子を放り出すシーンが印象的でした。

とても希望あふれる映画だったと思います。
来年は、今年以上に頑張りますfishsign03

カールじいさんといい、アトムといい、その他もろもろハリウッドアニメのキャラクターは、どうしてみんな泣きかけ困り顔なんでしょうね。感情を表すのに手っ取り早いと聞きましたが、どうなんかな、石川さん。

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