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2011年5月26日 (木)

マニュアルとステレオタイプ

 駅構内でよく店舗展開をしているらぽっぽというさつま芋スイーツ専門のお店がある。妻はそこのナチュラルスティックポテトという商品が大のお気に入りだ。彼女はそれを決まって朝食後の後片付けがひととおり終わった後、ひとりコーヒー(今は授乳中なのでカフェインレスであったり、穀物コーヒーだったりするが)を淹れ、2本だけ食べる。毎日決まって「朝食後に2本」だ。表情を見ていると、そのルーティンがかなりの至福であるようだ。

 似た光景は、学生時代、寿司屋でバイトしていた時にもあった。まだ忙しくなる前の黄昏時に、決まって入店してくる初老の男性がいた。身なりから重役であろう(あるいは“あった”)その男性は、上品にひとりカウンターに座ると、板さんは軽く会釈する程度で、すぐに白身のお造りを準備する。1合の熱燗が温まるのと同時にそのお造りは差し出され、初老は白身の甘さを確かめるようにゆっくりとそれを頬張っていく。
 初老は30分も店にいなかったと思う。ここからは私の勝手な妄想だが、家に帰れば帰ったで、和食を得意とする奥さんが、焼き魚とほうれん草のごま和えと風呂吹き大根を卓袱台に並べて待っていたことだろう。初老はそれもおいしく食べ、何十年も連れ添った老夫婦は、静かではあるが、無言の意味ある会話をし、毎晩同じく、それを至福としていたにちがいないのだ。少なくとも私の妄想の中では。

 初老の至福を妻が演出していたように、我が家の妻の至福は夫の私が演出している。育児で外出が(とりわけ都心までは)ままならない妻からの命令で、、、いやいや私の自主的な思いやりで、らぽっぽのナチュラルスティックポテトの本数が少なくなってくると、池袋の駅でそれを仕入れてくる。

 世にあるポイントカードの9割以上は、おそらく特典にたどり着く前までに、期限切れになるか、何かに紛れて紛失するか、あるいはもらった直後にゴミ箱行きになっているかのどれかだろう。私自身、ポイントをためて何かに換えた経験をほとんどもたない。
 しかし、このらぽっぽのポイントカードだけは着実に埋まっていき、期限を大幅に残してスタンプを押し切った。そんなお得意さんの私が決まって次のことを聞かれるのはなんとも解せない。

 「ナチュラルスティックポテトの食べ方は御存知ですか?」

 説明していなかったが、このナチュラルスティックポテトは基本「大学芋」なのだが、そうとはあえて呼んでいないのは、その食べ方(調理法)に特徴があるからだ。商品として供される時は、カチカチに冷凍されているのだ。すぐに食べられないこともないが(ちなみに、妻は凍ったままがいいと言っている)、ほどよく解凍した頃が食べ頃なんだそうだ。その状態だと、外側の糖蜜がカリッで、中のお芋はホクッとしている。それがこの大学芋のウリである。

 冷凍保存が利くので、私はだいたいLサイズ(315g)を2つ頼む(毎回、たったの2本ずつでも、これが毎日となれば、ストックはすぐに底をつく)。頼む際には、溜まりつつあるポイントカードを提示して、「Lサイズ2個ください」と言う。あきらかに常連さんなのだ。たとえ、その時々でバイトが変わっていようが、ポイントカードの溜まり具合をみれば、何度も購入しているのが一目瞭然だ。なのにだ。決まって店員さんは、

 「ナチュラルスティックポテトの食べ方は御存知ですか?」

 と私にいつも訊く。分かるだろうが…。もっと頭を使ってくれ!

 きっと条件反射になっているのだと思うが、毎回訊かれるこっちの身にもなってほしい。たいがい、発射直前に駆け込みで買うので、なんともそれが鬱陶しい。

 今日はこんなこともあった。

 娘の三種混合の予防注射で小児科へ行った。
 着くなり、娘がおしっこをしているようだったので、「おむつ台があるかどうか訊いてくるね」と妻が看護士のところに行ってくれた。戻ると腑に落ちない顔をしているので、どうしたのかと訊くと「“女性トイレ”にはあるらしいよ」と妻。この瞬間、自動的に今回のおむつ替え係は妻と決まった
(妻の名誉のためにも言っておくが、この時、妻がおむつ替えをしたくなかったわけではない)

 こうなると、社会的におむつ替えは「女がやるもの」ということになる。そうまで言わずとも、あらかた病院に子どもを連れてくるのはお母さんのほうで、ニーズはそちらに偏りがあるとの認識になる。
 提言したいのだが、小児科であればこそ、率先して社会の子育てのあり方をリードする姿勢を示すべきではないか。時代がそこまで来ていなかったとしても、男性トイレにもおむつ台を設置していれば、それが自然と「男性もやるものだよ」とのアピールになる。それぐらいの意味があれば、おむつ台を設置するコストは惜しくないと思うのだが。

 さて、妻がおむつを替えてくれ、ほどなくすると娘の名が呼ばれた。前回の予防接種の時は、妻が娘を抱える役だったので、「今度はあなたがやったら」ということで、私は娘を抱えて、医者の前に座った。明らかに今回は私が医師や看護士とのやり取りをする役回りということになる。
 しかし、だ。看護士は医師の真ん前に座っている私にではなく、やや離れた妻に向かって「お母さん、今日は三種混合の2回目で間違いないですね?」と確認を促した。その後もいくつかの大事な会話は妻と交わされていた。
 ちなみに、前回、妻が娘を抱えて注射を受けた時は、そのもろもろの大事な確認は、私にではなく、(当然)椅子に座って医師の真ん前にいる妻に行っていた。

 マニュアルやステレオタイプは、視界に入らないものの存在をそっくりそのまま消してしまう。診察室での私がまさにそうだった。
 マニュアルが全部を網羅することはなく、万全では決してありあえない。

 顧客満足度の高さで有名なディズニーランドでは、マニュアルに忠実な人材を育てるのではなく、会社のミッションを示した上での自主判断を重視している。3月11日の大震災の時、現場の判断で、店舗販売用のお菓子を配ったり、雨よけ用に大きなマスコット人形を与えたりしたのは、それを裏付けることになった。

 どういった姿勢がより幸せな社会に近づくかということの判断は皆さんに委ねるが、相手を信頼し、期待感を抱けるかというのは根本にあるのだと私は思う。消されてしまったものの可視化の第一歩はそこにある。


【参考】
 福島文二郎『9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方』中経出版
  ※2011年5月22日朝日新聞読書欄で紹介

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コメント

ま、相手も言いたくて言っているわけでもないでしょうから、

「天然棒状芋の食べ方なら知っとるよ」

なんて言ってみるのも一興?
お互いに、つまらない状況をお互いに笑えて、
打破できるかも。(だはは。。)

おむつかえといえば、私はけっこう変なところでやってました。
青空の下、飛行機の座席。。。女性用トイレでは、まだ、ありま
せんが。。。(勇気は要りますが、石川さんのいう「アピール効果」
だけはあるやも知れず?)

追記:「初老」って。。40歳のことかと思っていましたが、現在では
60歳前後の人に使うことが多い。。。と辞書にはあり、驚き。
そろそろ初老?

まったく、ちがった話なんですが、
今朝(5/27)の朝日新聞に連載されている
三谷幸喜さんの「ありふれた生活」
を読んでいると、考えさせられました。
別れた奥さんのことを書いていました。

確か、漱石の奥さんも、大江健三郎の
奥さんも自分が小説に書かれることを
嫌っていたように思います。

たぶん、「これは私ではない。誤解される」
と思うのだと思います。どんなに書いても、
たぶんそういうことになるのでしょうね。

森井さん、うちでもその記事読んでいました(夫婦ともに三谷ファンです)。で、読んだ後に、「分かるな〜、あんたと似たところがあるよ」って指摘されました。その後、すぐに私もそれを読み、彼女が何を言いたいのか、すぐに分かってしまいました(笑)。

「9割がバイト。。。」ということを最近ちょっと考えて
みたことがあります。

私も最近バイトで学校に顔を出すようになりましたが、
フルタイムの方は、本当に雑事に追われて、いつ
授業の予習をするんだろう?と思うことしきり。
表情も疲れきっているし。。。

こちらはバイトの身の上で、(人並みの)生活をする
にはまったく足りない収入ながら、圧倒的な「時間持ち」
ゆえに、1時間の授業のために5-6時間は予習ができます。

学校の授業は、バイトにおまかせ!の時代も来るかもね、
とふと思ったのでした。

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