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2011年6月14日 (火)

異端の存在意義

 またまたいくつか書きたいことが溜まっているのだが、今週末に控えた学会がそれを許してくれない。自分が所属している中ではもっとも長い学会で、つまり一番大事にしている学会である。原則、ここでは毎年研究発表することを自分に課している。ただ、課してはいるが、いつも納得いくほど充分に時間をかけられず、なんとか発表の体裁を整える(=帳尻を合わせる)のが関の山だ。これを“研究”と言っていいのか、甚だ疑問である。そもそも今年の研究発表のタイトルは、「『ハーバード白熱教室』は国際理解教育で有効か?」という学会の権威、品位にそぐわないミーハーなもので、「お前は学会をなめているのか!」と怒りを買うのは必至である。脱会勧告を受けるのは半ば覚悟して、今週末、京都に乗り込んでいく。

 それでも、五輪よろしく学会も「参加することに意義がある」のだと思いたい。私のような異端がいてこそ、社会や集団は健全さを保つものなのだ。

 こんな話をすると、よくパレートの法則が取り上げられる。“80:20の法則”や“バラツキの法則”などとも言われたりするが、「売り上げの8割は、2割の社員によって生み出されている」とかいうあれである。ときどきミツバチやアリの生態が例に挙げられ、「蜂の巣の中の社会にはまったく働かない“怠け者バチ”が必ず2割程度いるが、その2割を排除しても、やはり新たに働かない2割の“怠け者バチ”が出てくる」(その逆に“怠け者バチ”だけにすると、きちんと勤勉な働きバチが出現してくる)などと言われることがあるが、どうもそれは俗説らしい。

 それでも、「お利口個体」だけではなく、「バカ個体」を一定割合存在させたほうが、餌場の採取効率が上がることは実験によって立証されている。「お利口個体」は勤勉に同じルートを通って(一見)効率よく作業をし続けるのだが、「バカ個体」は回り道をショートカットしたり、新しい餌場の探索者として機能したりするのだそうだ。つまり、非効率に見える行動が混在するほうが、全体の効率が上がることが示されている
(参照:日本動物行動学会NEWS LETTER No.43 pp.22-23
 そう思えば、学会において異端(=バカ個体)の自分がいつか歴史に残る大論文を発表すると言えなくもない。あくまで可能性のお話だが…。

 さて、先日、妻が『1/4の奇跡〜本当のことだから』というドキュメンタリー映画を観てきた。私は仕事で都合がつかず、一緒に行くことはできなかったのだが、夕飯時に感想を聞くと、とても興味深い映画だったという。(以下は妻からの話、つまり観賞後の記憶に基づいているので、若干、正確さを欠くものになっているかもしれないことはご容赦願いたい)

 インカ帝国の栄えた古代ペルーでは、例えば6本指を持った、いわゆる“奇形”の人間の絵がいくつか残っている。それはそうした人たちが、決して社会から排除されていたわけではなく、どうも崇められていたことの証しだと考えられている。ネガティブな意味で特別視されていたということではなく、非常に不思議な力を持っていた者としてそう見られていたのである。
 インカ帝国では、
現代科学で解明できないことが行われていたようだが、そうした偉業は、彼らの不思議な力が寄与していたと思えなくもないのだそうだ。
 今は、障害者を“一般”に近づけようという社会的作用が生じるが、太古の昔は、“一般”が障害者に近づきたいとの文化が醸成していたのである。

 また、昔、アフリカで人類が滅亡してしまうのではないかというほど、マラリアが大発生した時のエピソードも示唆に富んでいる。
 そのマラリアの大流行において、人類が滅亡してしまうのではというほどの不安が広まるが、結果、杞憂に終わる(そりゃそうだ、今、自分たちがここにいるのだから)。どんなにマラリアが広まっても、絶対にマラリアに罹らない人たちが一定数いたからだ。調べていくとマラリアに罹らない人たちの赤血球は、通常のドーナツ型ではなく、鎌形をした鎌状赤血球が含まれていることが判明した。

 人類は、その正常なドーナツ型と鎌状と二つの組み合わせで構成されている。それぞれ、正常と正常、鎌状と正常、正常と鎌状、そして鎌状と鎌状の人間が1/4の割合で存在しているのだそうだ。鎌状と鎌状の組み合わせの人は障害を持っていて、特殊な貧血症に罹ってしまう。しかし、同じ鎌状の赤血球があっても正常と鎌状の組み合わせの2/4の人たちにはその病状は出てこない。
 そうなると、マラリアに罹った正常赤血球だけを持った人はなくなってしまい、残った3/4の人のうち、
正常赤血球をもった人たち2/4だけが生き延びていく。ここで押さえておきたいのは、実際にその後の人類を増やしていくのは、その2/4の人たちなのだが、それは1/4の鎌状赤血球を保持していた障害を持った人たちの存在があってこそ、成り立つことなのだ。(おそらくこれが映画タイトルのモチーフになっている)

 このエピソードを聞いて、自分が骨髄異形成症候群(不応性貧血)を患ってい
時のことを思い出した。主治医から自分の難病について噛み砕いて言われた説明は、「骨髄は、いわば血液生産工場で、石川君のその工場は、血液という製品を一途に作っているんだけど、形態の違う不良品ばかりを一生懸命作ってる、そんな状況なんだよ」というものだった。
 今、こうして生命を長らえ、娘へとそれをつなげられた不思議をありがたく思う。

 人間であろうが、植物であろうが、“今ある”ものにはそれぞれ意味がある。自分にとって、「面倒くさいから」とか「うざったいから」という理由で消してしまっていいものはない。そう否定すること、消してしまうことは、自分を否定し、自分を消してしまうことと直結する。
 “いなくていい/なくていい”と思われていても、それは“ある(存在する)“という時点で、
集団やシステムにおける存在意義を保持する。棄民や雑草と言われるものは、この世には存在しないはずなのだ。

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コメント

なるほど。

たまたま今手元に

『働きアリの2割はサボっている』稲垣栄洋 家の光協会

という本があり、読んでました。

アリの数に比例して、全体の仕事量は増加するんだろうか?
季節によって、繁忙期などもあるのかな?
サボる比率が2割ではなく、8割になれば、アリの貴族社会達成?
サボっているのではなく、別の仕事(警備など?)をやってる可能性は?

などと考えていたところでした。
俗説らしいというのは、どのあたりの資料をみれば、よかとですか?

追記:
(DEARのMLもお忙しい中、投稿していただいて、Many thanks)

学会もメンバーが変われば内容も変わったりするんでしょうね。
新しいことを投げかけたり、もたらすのは2割の若者?の役割かも。
さらに枠をはるかに超えるなら、後期印象派みたいに自分たちで旗揚げ
すればいいんでしょうね。

そういえば、「異端のすすめ」という本があったな
とゴソゴソと探していたら、

『異端のすすめ 個性化社会の人材開発と企業戦略』
長谷川慶太郎  新潮文庫

というのが出てきました。1987年のものなので、まだ日本が
経済的にも元気だった頃でしょう。

その後、異端の人は増えたのカナ?

(人にすすめられてじゃあ異端のの道に入ろうか
というパターンも考えにくいんですが)

けっこう、違和感を抱えたまま、目立たなく生きる
「お、そこにイタンか?」みたいなタイプの異端が
今でも多数派かも知れませんね。

森井さん、ダジャレが冴えていますね。
さて、「俗説」に関するお問い合わせですが、ブログ中にリンクを張った「日本動物行動学会」のPDFの該当ページに記載があります。ミツバチではなく、「働かないアリ」で例示しされていますよ。

どうも御教示ありがとうございます。

問題になるのは、
カブトフシアリで「働かないものは働かないまま」
というところでしょうかね。

ミツバチに関しては、
「働かないワーカーはミツバチでも存在している」
程度でしたね。

働く。。。の意味がやはりわかりにくいんですが、
(前に書いた本には)

働き蜂はみんなメスで、しかも「おばあさん」だそうです。

ミツバチマーヤのような新米の働き蜂は巣の外には
出ないで、巣の中の勤務だそうです。

さらに、働き蜂の寿命ですが、わずか一カ月とのこと。

う~ん、壮絶。こうなると「みなしごハッチ」も気になってきました。

前にどこかで書いたかもしれませんが、

異端って、
正統の反対のようでいて、実は
将来の正統になっていたり、
また、逆に、
過去においては正統だったものが変質し、
そちらからみて、(本来は正統なのに)
異端として排せられたり。。。

などと、
実は何が正統で何が異端か?
と思わされるような事例に
事欠かないように思います。

たぶん、異端そのものが優れていたり、
絶対的な価値があるというよりも、
相対的な関係で現れる、「別のもの」
「別の可能性」としての存在意義が
あるんだと思います。

でもないですかね?

また、この二つの関係は共生していても縁が
なかったり、対立していても調和が
あったりすることもあるような。

よくわかりませんが。。。

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