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2011年7月27日 (水)

奇跡の教室

 今、ウガンダに着いて最初の朝を迎えようとしている。まだ外は暗く、きっと西の空だと思うのだが、薄っぺらな月が見えている。
 一昨日の16時過ぎに自宅を出て、ホテルに着いたのが翌日の17時過ぎだったので、丸々一日を費やした。いや、時差が6時間あるのだから30時間もかかったことになる。飛行機に乗るのはなんら苦ではなく、むしろ好きなぐらいなのだが、今回は機内食が進まず、本調子ではなかった。出発前が不規則なリズムだったからなのか、不惑の歳を超えたから当然なのか、とにかく“やっとたどり着いたぁ〜”といった感じだったのだ。

 結婚してから、海外出張に行く際には、義母が手作りの梅干しを持たせてくれる。Img_1739_2 もともとは妻の習慣だった「海外旅行の際の梅干し持参」は、かの地で日本食が恋しくなるからということではなく、疲労回復や殺菌作用があるという管理栄養士だった彼女の科学的根拠に基づく合理的行為の勧めだった。しかし今では、その合理的行為以上の「無事に戻ってこられる」ためのお守り代わりとなっている。今回もわざわざ私の出発直前に梅を干してくれ、できたての十粒を「持っていきなさい」と持たせてくれた。
 自分の部屋に入るなり、スーツケースを開け、まずは一粒取り出す。それをジュッとやると、酸っぱさが体全体に沁みわたり、疲労が抜けると同時に、安堵がひろがる。これでこれから10日間に及ぶウガンダでの仕事に臨む前に行う儀礼は終了した。

 前に、非常に遅筆であることをブログで書いたが、そこに輪をかけ、自分は“遅読”でもある。職業柄、遅筆であり、遅読であることはどうかと思うのだが、ここまではなんとかやってこられている(笑)。
 一時期、勝間和代氏がフォトリーディングをしていることを知り、そんなことができたら自分の仕事の質が変わってくると、高い料金を払って二日間のセミナーを受講したこともあったが、遅読の性分を変えられないままでいる。

 そんな自分が機内で一冊の本を読み終えたことは、久々の快挙である。しかし、皮肉なことに、それは遅読を勧める伝説の灘校国語教師、橋本武を紹介すEchisensei る「奇跡の教室 エチ先生と『銀の匙』の子どもたち」(小学館)という本である。
 朝日新聞の「ひと」欄かなにかで紹介されていたのを見て
(さっきネットで調べると元旦の新聞に掲載されていたようだ)、本だけは

 橋本先生は、1冊の文庫本『銀の匙』(中勘助)だけを3年かけて読み込む授業を実践してきた。その授業実践は、横道に逸れまくる究極のスローリーディングである。そうした取り組みが、公立校の滑り止めにすぎなかった私立高校を東大合格日本一へ導くことになる。6年一貫同一教師制という灘校独特のシステムがあるので、伝説の授業を受けられたのはわずかに1,000人ほどであるが、その卒業生はそうそうたるものである。
(東京大学総長の濱田純一、社民党党首・福島瑞穂の夫であり、山崎豊子の『沈まぬ太陽』に実名で出てくる日本弁護士連合会第36代事務総長の海度雄一、元ニュースキャスターで、現神奈川県知事の黒岩祐治など)

 ただし、橋本先生の目指すところは“東大合格日本一”などという結果ではない。彼は、教え子たちが「還暦を過ぎてもみんな前を向いて歩いている」という結果のほうを「何より嬉しい」と言っている。
 そう、“教え子”と思わず書いてしまったが、彼は生徒たちを“教え子”と呼んだことは一度もない。教師と生徒との関係の限界をわきまえており、“教え子”に対して自分が“教えの親”だとはとうてい僭越で言うことができないのだそうだ。そうした彼の生徒たちへの姿勢が、さまざまな学びを引き出していったのだろう。

 本を読み進めていくと、自分が普段大事にしている「気づき」という言葉が時折出てくる。橋本先生の言うところにまったく首を縦に振るばかりで共感しきりなのは、自分が目指す方向があながち間違っていないのだと、98歳の大先輩に勇気づけられる思いだ。

 これからしばらくは教師海外研修に参加する12人の先生方とウガンダで過ごすことになる。どんな学びを帰国後に展開できるのか、橋本先生の言葉を大事にしながら、みんなと考えていこうと思う。

 すっかり日が昇り、街が動き出した。どんな出会いがここであるのか、非常に楽しみとなっている。
 

【参考】
■asahi.com(関西) 2011年6月18日「98歳変わらぬ授業 27年ぶりに母校の教壇に 灘中」
  http://www.asahi.com/kansai/entertainment/news/OSK201106180040.html

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コメント

12人の先生とウガンダでどんな白熱教室になっているのでしょうか?

「12人の怒れる教師たち」? まさか、そんなことないでしょうね。

彼らは、非日常的な旅をしながら授業という日常を考えている
わけですね。

ちょっとお気の毒?(国内でいる教師と比べると)そんなこともないのかな?

東大合格と『銀の匙』の授業との因果関係
は、どうなんでしょうか?(例えば、1000人だけ
という事実も、少し気には。。。)

また、「教え子」という表現を避けるということにも
おのずと関連してくることかと思います。

なんか、そのあたり、読者は「ある」と見てる
のか、「ない」と見てるのか?

「ないようなのに実はあるのかも」と思った
人が多いのかな。読者の価値観にもあいまいな
ところがあるような気がします。

また、一冊の本だけやっているようにも見えるけれど、
もし、そこからいろんな話に発展するのであれば、
(その本をまだ読んでません)それは遅読ではない
と思います。

ある意味、それは「精読」でもあり、むしろ一冊の
本を読むというより、その『銀の匙』を読む橋本先生
を読む行為に近くなると思います。

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